20年前、私は東京都江東区豊洲のマンションで自治会長を、地元の小学校でPTA会長を務めていた。

あのとき、外国人住民への情報伝達に、何度も壁にぶつかった。ゴミ出しのルール、防災訓練の案内——伝えようとしても、届かない。言葉の問題だけではなかった。仕組みが、そもそも「全員に届く」設計になっていなかった。

その後も、同じ地域で活動を続けた。自治会会長を9年(2013〜2022年)、小学校のPTA会長を5年(2016〜2021年)、江東区選挙管理委員——地域に根ざした活動を通じて、繰り返し同じ問いに直面した。

あれから20年。今は新宿区に住んでいる。在留外国人は412万人を超えた。状況は、変わっていない。むしろ、大きくなっている。


「受け入れよう」でも「排除しよう」でもなく

「外国人が増えて不安だ」という声を、今もよく耳にする。その不安の正体は何か、と考えてきた。

多くの場合、それは「情報の空白」だ。相手のことが分からないから怖い。何を考えているか分からないから不安になる。

関東大震災のとき、情報が遮断された結果、何が起きたか——歴史は答えを知っている。

「外国人を受け入れよう」でも「排除しよう」でもない。明日も明後日も、この街にはさまざまな人が暮らし続ける。その現実の中で、「全員に情報が届く地域」をどう作るか——それが問いだ。

情報格差は、外国人だけの問題ではない。高齢者、障害者、子ども、就職氷河期世代、行政の難しい言葉が届かない人——「参加できない人」を起点に考えると、課題の輪郭が見えてくる。


テクノロジーは道具だ

私はコンサルティングファームで20年間、企業の変革を支援してきた。AIとテクノロジーの可能性を、仕事の中で実感してきた。

これらは目的ではなく、道具だ。課題を解決するために使う。使わせられない。

防災情報を多言語・動画で届ける。選挙の情報をわかりやすく伝える。教師がAIと正しく付き合えるよう支援する。地域の情報を、住民全員に平等に届ける。一人でも、自分の力で仕事を作れるよう支援する。

テクノロジーを使えば、これらは実現できる。


社会貢献とビジネスを、分けない

「なんでそんなことをするの?」——自治会長を9年、PTA会長を5年やる中で、何度も聞かれた。

本音を言おう。自分が住む地域の環境が悪ければ、自分の家族の生活も悪くなる。隣に住む外国人住民が防災情報を理解できなければ、災害時に自分の地域全体が危うくなる。綺麗事ではなく、自分ごとだ。

一方で今の日本では、自治会・PTA・NPOへの不信感が高まっている。「補助金の無駄遣い」「既得権の温床」——社会貢献が「偽善者のやること」に見られるようになった背景には、そうした現実がある。

「助け合い」の精神は、今も日本人の中に生きている。ただ、それを「組織化」することへの信頼が失われた。欧米のように大富豪が財団を作り社会課題に取り組む文化は、日本にはない。だから、別のモデルが必要だ。

社会貢献とビジネスを分けない。情報格差を解消するプロダクトを作り、それが持続可能なビジネスとして成り立つ形にする。テクノロジーを使えば、かつて大きな組織が担っていた機能を、小さなチームで速く・安く実現できる。利他心に頼らない仕組みこそが、社会を変え続ける。


一人で始めて、仲間を増やす

「アップグレード・ジャパン」は、2026年6月に設立した任意団体だ。今はまだ、私一人で動いている。

ただ、「ゼロからのスタート」ではない。豊洲での10年以上の活動——防災体制の構築、PTA改革、選挙実務——それらは全て、「情報の壁をなくす」という同じ問いへの、現場からのアプローチだった。アップグレード・ジャパンは、その延長線上にある。

実績を作り、信頼を積み、仲間を増やす。そして、社会を変える。

大きな声でスローガンを叫ぶより、小さくてもいいから動いているプロダクトを作る。議論より実行。「完璧な計画」より「動いている仕組み」を重視する。

それが、アップグレード・ジャパンの出発点。

浅見純一郎

浅見純一郎

アップグレード・ジャパン 代表
2026年6月

@junichiro_asami

浅見純一郎について

キャリア

コンサルティングファームで20年以上、企業の変革・DXを支援。AI・テクノロジーの実装に知見を持つ。

地域活動

江東区豊洲で自治会長(9年)・小学校PTA会長(5年)を歴任。現在は東京都新宿区在住。

関係組織

ArthurBrief株式会社・イノベーティブジャパン株式会社の代表。アップグレード・ジャパンを社会貢献活動の柱として設立。

生成AIと政治・行政

2025年版(初版)

生成AIと政治・行政
AIと人間との対話で探る日本の未来

浅見純一郎 著 / イノベーティブ・ジャパン

生成AIと著者(浅見純一郎)の対談形式で、AIが政治・行政・民主主義をどう変えるかを探る。防災・選挙DX・地域課題・就職氷河期世代の問題まで、現場経験に基づく実践的考察。

本書の主なテーマ

  • ▶ AIは市民・政治・行政をどう変えるか
  • ▶ 選挙DX・有権者のAI活用
  • ▶ 防災情報のパーソナライズ
  • ▶ PTA・自治会活動とAI
  • ▶ 就職氷河期世代と社会構造の課題
  • ▶ 日本の民主主義をアップグレードする

YouTubeプレイリスト・noteで関連コンテンツを発信中

地域活動 タイムライン

2013〜2022年(9年間)
アーバンドックパークシティ豊洲 自治会会長
江東区地域振興課との連携・地域行事の運営
2016〜2021年(5年間)
豊洲北小学校 PTA会長
退任時に江東区政功労者表彰受賞
2019〜2021年頃
江東区 選挙管理委員
衆議院選挙・都議会選挙の実務に携わる
2021年〜
地域学校協働本部 コーディネーター(豊洲北小学校)
PTA会長退任後も学校・地域・家庭の連携を継続
2026年6月
アップグレード・ジャパン 設立
豊洲での10年以上の実践を、社会全体へ広げるために